古酒の第一人者 上野 伸弘氏に聞く「TAKANOME 海底熟成」の楽しみ方

古酒の第一人者 上野 伸弘氏に聞く「TAKANOME 海底熟成」の楽しみ方

波の振動によって熟成が進むと言われる海底。

TAKANOME 初の熟成コレクション「TAKANOME 海底熟成」は、静岡県は南伊豆に位置するヒリゾ浜の海底で熟成をさせた。
沈めた位置によって、波の振動の伝わり方が変わり、同じお酒でも絶妙に味わいが変化し、鷹ノ目は5つの味わいに進化した。

今回は古酒の第一人者であり、長期熟成酒BAR「酒茶論」のオーナー 上野 伸弘(うえの のぶひろ)氏に、「TAKANOME 海底熟成」を試飲していただいた。

 

▲上野伸弘 / 長期熟成酒BAR「酒茶論」オーナー。酒販会社「株式会社プレミアム・サケ・コンソーシアム」や、古酒熟成酒に日本酒の未来を描く蔵元が集まって設立された一般社団法人「刻(とき)SAKE協会」の常任理事を務めるなど『日本酒の新しい価値創造』をテーマに幅広く活躍する。

 

お酒が持っている様々な要素を探ることができるのが熟成の面白さ、魅力

昨今、ウイスキーが8000万円で落札されたり、シャンパン、ワインでも「熟成」というワードはよく聞くようになった。
では、熟成日本酒の楽しみ方や魅力はどこにあるのだろうか。

上野氏:熟成の目的は、味に奥行きと幅をつけることです。

新酒は、人間に例えると新入社員のようなもので、名刺を持って “僕、こういうものです” と全てをさらけ出してぶつけてくる。わかりやすいし、受け止めるだけでいい。
一方、熟成酒は経営者の如く懐が深く奥行きがあるので、一口、二口、三口と飲み進める毎に様々な要素の発見があり、その重層的な味わいの奥行きを探る楽しみを覚えて頂きたい。
1口1口、重層的に味が変わっていく。
1口目は甘さを感じたけど、2口目は渋みがあるな、など同じお酒でも感じ方に違いを見つけることができます。その変化の様子を楽しんでいただきたい。

普段のお酒、今回だったら「鷹ノ目」との比較も良いですし、お酒が持っているいろんな要素を探っていくことができるのが熟成の面白さ、魅力です。

 

非常にバランスの取れた、とても綺麗なお酒 

 

 「TAKANOME 海底熟成」を、早速上野氏にテイスティングしていただいた。

上野氏:まず、元々の鷹ノ目と比べて、6ヶ月の熟成でここまで差が出るというのは、驚きました。
場所によって当たってる振動の周波数が異なるので、それが内容物における変化に現れてるわけですが、海のバイブレーションの力って本当に面白い。

香りは、全般的に開いた印象です。5種類の中でも特に「雲海」と「海底神殿」は、香りが開いています。
鷹ノ目自体、非常にバランスの取れたお酒で、味わいは海底熟成も綺麗なお酒という印象。

個人的には「雲海」が、香りと味のバランスからすると一番好みです。

お酒には、単体で楽しんで、ちょっと口に物を運ぶタイプのものと、料理と共に飲むことで、その「うまさ」がより伝わるものがあります。
日本酒は昔から、「塩を舐めて飲む」なんて話があります。日本酒は五味の中で塩味がないんです。だから塩気が欲しくなる。
対照的に、ワインはうま味が乏しいので、食べるものが必要になります。

「雲海」「海底神殿」「天ノ川」はバランスが良いので、お酒の特徴を楽しみながら、補完的に塩味のあるものを口に運ぶだけでも、十分にその「うまさ」が伝わってきます。
最近は、ペアリングについてよく話しが上がりますが、そもそも単体で飲んでいただいても良い様に味のバランスが整っているものもあり、それらは実はそんなに料理との引き合いってないんです。 

 

前菜と一緒に飲んでいただくと、食欲を喚起させる

 

上野氏:「渦潮」と「ダイヤモンド富士」は、酸味もあるので、何かうまみを重ねてあげてバランスを整えてあげるのもおすすめです。
例えば、前菜と一緒に飲んでいただくと、食欲を喚起させると思います。
生ハムを使ったサラダなど旨味が綺麗な食材と飲みたいです。

なるべくフルートみたいな形をした細みのグラスで、舌のセンターを滑らしていくように飲んでいくと良いです。
元々生酒なので、基本的にはよく冷やしてから飲むのが良いと思いますが、飲用温度帯によってだいぶ印象を変えるお酒だと感じました。
時間が経ってくるとまた香りが変わります。

熟成酒の楽しみ方は飲み比べ

熟成酒と聞くと、少し取り扱いが難しい印象もあるが実際はどのように楽しむのが良いのだろうか。

上野氏:冒頭でも述べましたが、熟成酒は、熟成前と熟成後の飲み比べが楽しいです。
今回であれば、5種類をそれぞれ楽しむのも良いですね。
同じ海の中だったけれども、そのポジショニングによって変化がどう違ったかを実際に五感で感じられます。

私たちは熟成の研究をしていますが、単純に美味しくなるからやってるわけではないんです。
海中のバイブレーションにおける物理的、科学的変化を楽しんで欲しい。
例えば今回も同じ条件なのに、明らかに香りや味わいが違う。

その振動の触り方による変化は、美味しさはもちろん、プラスアルファの楽しさが加わり、物の価値が変わっていきます。

 

あらゆる質感の器で、温度を変え、楽しめる旨味成分の豊富なお酒が日本酒

上野氏:世界のお酒の中で、日本酒のどこに特異性があるのかを考えた時に、あらゆる質感の器を用いて、温度を変えて楽しめる旨味成分の豊富なお酒であることです。

あらゆる質感というのは、磁器、陶器、漆器、ガラス、スズ、銀器、こういう質感の違う器を使って飲む文化は世界中探してもない。
だとすると、いろんなグラスで楽しんだ方が器で楽しんだ方がいいのは間違いない。
また日本には、それなりの長い歴史で使われてきた器があるので、それで楽しんだ方がいい。

一方、昨今のお酒に限っては、この香りを楽しむっていう方向性のお酒に関して、日本の器っていうのは未熟でした。
盃だとしたら、口元まで持ってきて初めて香りが届くので、ワイングラスを代わりに使う。
また熟成のお酒も色とツヤ、香りで言うと、それを満足させるのは旧来の器ではできない。
例えば、甘さが特徴の「天ノ川」は、わざと舌の手前の方に落としてあげるような口の広いグラスで飲むと、その魅力がまた伝わります。 

 

濁りは「うまさ」 

 上野氏:熟成のお酒の「色」と「ツヤ」の話しを最後にすると、時間とともに熟成すると、元々は溶け込んでいた粒子の荒いものが凝固してきます。
これがもっと時間が経つとオリになって落ちてくる。
「TAKANOME 海底熟成」も濁りが見えますが、少しづつ固まってきて、濁っているんです。

熟成が進んでるということが目に見えますし、うま味があるということもわかります。
昔、お茶の宣伝で濁りは「うまさ」というのがありましたが、発想的にはクリアがいいわけではないのです。

 

貴重な時間をありがとうございました。

長期熟成日本酒BAR 酒茶論

■住所:〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目4−8 曽根ビル B103
■営業時間:18:00~23:30
■定休日:日曜日
■電話番号:03-6263-9710
■web: https://www.shusaron.net/

 

『TAKANOME 海底熟成』23年1月28日(土) より第二弾販売を実施

南伊豆のヒリゾ浜の海底に半年間、その後冷暗所で味を落ち着かせ、計2年間熟成させて誕生した『TAKANOME 海底熟成』。1/28(土)より第二弾の販売を実施いたします。


販売スケジュール

■第二弾:2023年1月28日(土) 10:00

販売商品・販売価格
・海底熟成 スペシャルセット ¥120,500円
・Sea of Clouds(雲海) ¥44,000
・Milky Way(天の川) ¥55,000
・Undersea Temple(海底神殿)¥60,000

 

■販売場所:TAKANOME 公式オンラインショップ
■アルコール度数:16% 
■内容量:720ml 
■製造元:はつもみぢ(山口県)

※全商品に「TAKANOME / 鷹ノ目 180ml」が付属いたします
※全商品「税・送料込み」になります
※数に限りがあるのでなくなり次第終了となります

 

販売に関する詳細は特設サイトをご覧ください。


鷹ノ目創業者 平野の「日本酒業界の熟成分野はまだ未開拓であるが、うまさの追求を考えたときに大きな可能性がある。」との想いからスタート。全ての生命の起源である「海」が吹き込んだ、味わいをご堪能ください。

 


 

 

 

関連記事

日本料理の真髄を継承しつつ新たな美食の可能性を探る─『木の花』料理長・宮山裕伴
日本料理の真髄を継承しつつ新たな美食の可能性を探る─『木の花』料理長・宮山裕伴
国土が南北に長く、海・山・里から多様で豊かな自然の恵みがもたらされる日本。四季折々の新鮮な食材を用い、自然の美しさを繊細かつ味わい深く表現する日本料理は、「自然を尊ぶ」日本人の気質を表す伝統食として、ユネスコの無形文化遺産にも登録され...
最強タッグが作り出す至高の味覚体験 /『クラージュ』シェフ・古屋聖良、オーナー・相澤ジーノ
最強タッグが作り出す至高の味覚体験 /『クラージュ』シェフ・古屋聖良、オーナー・相澤ジーノ
街に賑わいがもどり、人の交わりや食の楽しみがもたらす高揚感を改めて感じさせられる現在。若く瑞々しい感性が生み出す料理と、熟達したサービスマンによる絶妙なホスピタリティで話題を呼んでいるのが、東京・麻布十番の『クラージュ』だ。美食家や上...
江戸前鮨と日本酒の至高のマリアージュを探り続ける、『鮨m』ソムリエ・木村好伸
江戸前鮨と日本酒の至高のマリアージュを探り続ける、『鮨m』ソムリエ・木村好伸
東京・青山に店を構える『鮨m』は、ダブルカウンターを設えた劇場型のプレゼンテーションと、江戸前鮨と日本酒・ワインとの絶妙なマリアージュで、唯一無二の魅力を放つ人気店だ。豊富な知識と経験から編み出された知見で、ソムリエとして手腕をふるう...
好きなものを、純粋に、どこまでも突き詰める。ガラス作家・波多野裕子氏
好きなものを、純粋に、どこまでも突き詰める。ガラス作家・波多野裕子氏
自分の好きなことを、とことん追求して極めていく。それが、良いものづくりにつながる。波多野氏の工房を訪れて、そんな当たり前のことに改めて気づかされた。 波多野裕子 ガラス(パート・ド・ヴェール寄りのキャスティング)で主にうつわやランプ...