ニコライ・バーグマン氏 vol.01 溢れる想いが世界を動かす

ニコライ・バーグマン氏 vol.01 溢れる想いが世界を動かす

常識に囚われず、革新を起こし続けてきた一流たちのスピリットに触れるTAKANOME MAGAZINE。
今回話を伺ったのは、黒い箱の蓋を開けると、鮮やかな花々がアレンジされている新しいフラワーギフトの形『フラワーボックス』で、フラワーデザイン界に新風を巻き起こしたフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏。フラワーショップの運営にとどまらず、フラワースクールでの指導やライブパフォーマンス、ファッションやデザイン界とのコラボレーション、ビジネスセミナーの講師やテレビCM出演と活動の幅を広げている。vol.1では、そのルーツやインスピレーションの源についてお話を伺った。

 ※後編はこちら

15歳で自分が進む道を決心

国内外で活躍し、世界的に有名なフラワーアーティストの1人であるニコライ・バーグマン氏。父親は鉢物の卸業、母親はフローリスト、祖父はりんご園を営んでおり、自然が普通に生活の中に溶け込んでいる環境で育った彼は、やはり自然に、とりわけ花に興味を持つようになっていく。

「フローリストになる」

そう決心したのは15歳の時。ニコライ氏の出身であるデンマークでは、15歳になると国が職業体験を用意する。その一つとしてフラワーショップを選び、1週間の研修を受けた。その経験がニコライ氏の運命を決める。

 

 

「その1週間がとにかく楽しかったんです。改めて自分はこれがやりたかったんだと、一気に決心がつきましたね」。

それまでも母に教わりながら花を飾ったり、リースをつくったりしていたが、この道に進むべきか、どこかで迷っている自分がいた。でも、その迷いをこの1週間の研修が吹き飛ばしてくれたのだ。

そこからはビジネスカレッジに3年間通い、花を基礎から学んだ。店舗での研修を積み、花に関することだけではなく、ビジネス経営の視点なども身につけていった。そして、晴れてフローリストの資格を取得したのは19歳の時。訓練を終えたニコライ氏は、卒業旅行として初めて日本へ来日する。

「父親の知人がいるという理由で、卒業旅行に日本を選びました。その時に日本のフラワーショップで働かせてもらったのですが、満員電車に乗って往復3時間かかるお店とかけもちしたりして、週6日、朝から夜まで働いて、とにかくハードな毎日を過ごしていました」。

そうして約3カ月間、およそ卒業旅行のイメージからは程遠い時間を過ごし、一旦デンマークへ帰国。そこから約1年後、再びニコライ氏は来日する。

「すごく大変だったけれど、振り返ってみると仕事は楽しかったし、日本がとても魅力的に感じたんです」。

最初は食べ物や文化、言葉、なんでもデンマークと違うことが面白かった。段々と年を重ねるごとに、デンマークではできなかったことも、日本でならチャレンジできることがたくさんあると分かってきた。当初は1年ほど滞在できればいいと考えていたが、気がつけば20年以上も暮らすことに。海外出張などから日本に戻ると「ああ、帰ってきた」とホッとすると話す。

「今では、デンマークで過ごした時間より、日本で過ごした時間の方が長くなってしまいました」。

根底にあるのは、「好き」という強い気持ち

21歳で再来日後は、7年間の修行期間を経て独立。今やニコライ氏のシグネチャー・アイテムとなっている『フラワーボックス』によって、彼の名前は一躍有名になった。それが2000年のこと。こう書くと、順風満帆、何の苦労もなく華々しい道を歩いてきたかのように思えるが、花の仕事はとにかく大変だ。まずは朝が早い。まだ世が暗いうちに市場へ赴き、花を仕入れる。店に戻った後は水揚げをして、花の下準備をする。寒い冬でもお湯は使えず、冷たい水で手がしびれることもあるだろう。開店準備なども済ませて、やっとそこからフラワーショップとしての1日が始まる。

「会社勤めをされている方が通勤して仕事を始める時間の、5、6時間前から働いていることになりますね」。

笑いながらそう話すが、基本的に立ち仕事の上、週末はウエディングやパーティ、イベントなどが入ることも多く、休みも思うようにとれない。本当に大変な仕事だと思うが、何故この仕事を続けられているのか理由を聞いてみた

花がとても好きなんです。そうでなければできないほど大変な仕事だと思います。この仕事に携わっている人は、ものすごく花が好きだからやっていると思いますよ」。

なんともシンプルな答えだった。もちろん、花に癒されるということもあるし、ウエディングなどの現場で幸せな瞬間に関われることや、お客様が喜ぶ顔を見られることは素敵だし、なかなか他の職業では経験できないことかもしれない。でも、1番の理由は「好き」という強い気持ち

イベント会社から、プレス発表会で渡すギフトを依頼されたことから生まれた『フラワーボックス』も、花が好きで、どうしたら大好きな花が活かせるか、そしてお客様にも喜んでもらえるかを考え尽くした結果だった。箱に直接フラワーアレンジメントを施すという斬新なアイディアは結局採用されなかったが、試作品を店頭に並べたところ、多くのお客様から反響を得ることができた。今ではそれが新しいフラワーギフトの定番となっている。

その『フラワーボックス』を皮切りに、ブランドを創設し、カフェやカルチャースペースを併設したフラッグシップストアをオープンさせたり、展覧会を開催したりと、ますます活動の幅を広げているニコライ氏。そのインスピレーションの源になっているものは何なのだろう。

「市場に行って新しい花を発見したり、大自然に触れたり。あとはファッションやインテリア、建築も好きで、その形や素材、まとっている雰囲気からインスピレーションを得ることが多いですね」。

来日当初は寺社仏閣など、日本の伝統的な文化から得ることも多かったが、現在は伝統を感じさせつつ、新しい要素も取り入れたモダンジャパニーズが刺激になることが多いという。中でも隈研吾氏や安藤忠雄氏の建築がお気に入りだ。

10年、20年住んだからこそ分かる日本の良さに、ニコライ氏の豊かな感性がプラスされて、人の心を惹きつけるフラワーアートはつくられている。

 

ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ

ニコライ・バーグマンのフラワーデザインを取り入れ、人と自然がつながる唯一無二の場所として2022年4月15日にオープン。手つかずの自然が残る約27,000㎡の敷地では、季節ごとの花や自然、オブジェ、アートワークなどが楽しめるほか、イベントなども開催予定。

住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅字大涌沢1323-119
開園時間:通常期 10:00〜17:00 / 冬季(12月〜2月) 10:00〜16:30
休園日:毎週月曜日 / 年末年始
電話番号:0460-83-8510
HP: https://hakonegardens.jp

入園料:大人事前Web予約1,500円 / 現地購入1,800円 (クレジットカードまたは電子マネー決済のみ)・学生事前Web予約1,100円 / 現地購入1,400円 (クレジットカードまたは電子マネー決済のみ)・小学生以下無料
駐車料金:普通車500円(園内22台・チケット購入時に駐車場付きのチケットを選択)
※金額はすべて税込み
※園内は全てキャッシュレス決済です

 

 

ニコライ バーグマン フラワーズ & デザイン
フラッグシップ ストア

 ニコライ・バーグマン氏が創り出す、華やかで美しいフラワーデザインの世界観が体感できる旗艦店。フラワーショップのほか、北欧の家具が配されたカフェも併設。店舗2階ではフラワースデザインスクールも開催している。

住所:東京都港区南青山5-7-2
営業時間:10:00〜19:00
定休日:奇数月の第1月曜日
電話番号: 03-5464-0743
HP: https://www.nicolaibergmann.com

 

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Interview: Mihoko Matsui
Text: Miyo Morikuni
Photo:Yoshimichi Saiki
Structure: Sachika Nagakane

 

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